【工業用】断熱材の熱伝導率とは?省エネ・コスト削減を実現する選び方も解説

工業炉の安定した温度管理や省エネルギー化を実現するうえで、断熱材の「熱伝導率」は最も基本的で重要な指標のひとつです。

一方で、断熱材には多くの種類があるため、どのような基準で選定すべきか悩む現場担当者も少なくありません。

そこで本記事では、工業用断熱材における熱伝導率の基礎から、実運用で押さえておきたい選定のポイントまでわかりやすく解説します。炉の性能向上やコスト削減を目指す方は、ぜひ参考としてご覧ください。

工業用断熱材の熱伝導率とは?

工業用断熱材の熱伝導率とは?

まずは、基本知識のおさらいとして、断熱材や熱伝導率とは何か、そしてなぜ工業用断熱材において熱伝導率の数値が重視されるのかを解説します。

断熱材とは何か

断熱材とは、文字通り「熱の移動を遮断する素材」のことです。

工業分野においては、マイナス200℃以下の超低温域から2000℃を超える超高温域まで、非常に幅広い温度範囲で使用されています。

断熱材の仕組みには、伝導を止める方法・対流を止める方法・輻射(放射)を止める方法という主に3種類があり、素材や構造によって熱の伝わり方を阻害する方法や得意とする温度域が異なります。

断熱材は繊維質や微細粒子による層構造を持っており、固体同士の接触点が少なくなっています。これにより熱が伝わる経路が長くなり、熱伝導を効率的に抑制可能です。

繊維状や多孔質の構造の内部に「動かない空気(静止空気)」を無数に保持することで、空気の移動による熱の運搬(対流)を防ぎ、伝熱を阻害する仕組みです。

高温域では輻射(放射)による熱移動の影響が支配的になります。そのため、断熱材内部の複雑な微細構造や放射抑制材によって熱を散乱・吸収することで、輻射による伝熱を低減します。

例えば、500℃を超えるような工業炉向けの断熱材には、セラミックファイバーやアルミナファイバー、マイクロポーラスなどの素材が用いられますが、これらは上記の伝導・対流・輻射(放射)という3種類をコントロールすることで熱の伝達を抑制しています。

断熱材を適切に使用することは単に熱を閉じ込めるだけではなく、エネルギーコストの削減、生産効率や製品精度の向上、さらには火傷防止・室温上昇の抑制といった作業環境の改善など、多くの経済的・環境的メリットを生み出します。

熱伝導率とは何か

熱伝導率とは、物質の内部を熱がどれだけ伝わりやすいか(移動しやすいか)を表す指標です。

断熱材の性能を比較する際の最も基本となる物理量であり、この数値が小さいほど熱を伝えにくい(断熱性能が高い)ことを意味します。

熱伝導率(単位:W/(m·K)またはW/(m·℃))は、「厚さ1mの材料の両面に1℃(1K)の温度差があるとき、1㎡の面積を1秒間に通り抜ける熱量」として定義されます。熱伝導率の公式(フーリエの法則)において、熱伝導率は熱の流れに比例するため、熱伝導率が半分になれば逃げる熱量も半分になります。

また、物質の熱の伝わりやすさは一般的に、気体<液体<固体の順に大きくなります。工業用として使用される断熱材が空気層を多く含む構造になっているのは、熱伝導率が低い「気体(空気)」の特性を利用して、全体の熱伝導率を下げるためです

断熱材における熱伝導率の重要性

断熱材における熱伝導率は、工業炉や高温設備の性能を左右する極めて重要な指標です。

熱伝導率が低いほど炉内の熱が外部へ逃げにくくなり、設定温度を効率良く維持できます。その結果、燃料や電力の消費を抑えられ、省エネルギー化や運転コストの削減に繋がるのです。

また、熱伝導率は一般に0.05W/(m\cdot K)や0.20W/(m\cdot K)といった数値で表されますが、工業用材料の比較においては、小数点第2位や第3位のわずかな数値の差が、設備全体の表面温度や放散熱量に劇的な違いを生むことを理解しておく必要があります。

さらに、多くの断熱材は高温域になるほど内部での輻射熱の影響が強まり、数値が上昇して断熱性能が低下する性質を持っています。そのため、カタログに記載された「常温時の数値」だけで判断するのではなく、実際に使用される数値を正確に把握することが大切です。

なお、以下は温度による熱伝導率の変化を表したグラフです。あわせてご覧ください。

断熱材の熱伝導率が温度によってどう変化するかを表すグラフ

工業用断熱材の種類による熱伝導率の違い

カタログ上は「工業用断熱材」であっても、材料の構造や特性を理解せずに選定すると、期待した断熱効果が得られない場合もあります。

ここでは、工業用断熱材の種類ごとの特徴に着目し、熱伝導率がどのように異なるのかをわかりやすく解説します。

断熱材の種類によって熱伝導率は異なる

工業用断熱材は、種類によって熱伝導率が大きく異なり、用途や求める性能に応じた選定が欠かせません。

なぜなら、断熱材ごとに素材の構造・密度・内部に含まれる空気量や気孔構造がそれぞれ異なるためです。これらの要素が熱の伝導・対流・輻射(放射)の起こりやすさに影響し、結果として断熱性能に明確な差が生じます。

例えば、代表的な断熱材は、熱伝導率の目安によって次のように分類できます。

低熱伝導率タイプセラミックファイバー、アルミナファイバー、生体溶解性ファイバー、マイクロポーラス断熱材、真空断熱材など
中程度の熱伝導率タイプ断熱耐火れんが、珪酸カルシウム断熱材、パーライト系断熱材、バーミキュライト系断熱材など
高熱伝導率タイプ緻密耐火れんが、高アルミナれんが、ムライトれんが、炭化ケイ素など

ただし、断熱性能は「材料の種類」だけで一概に決まるものではありません。同じ種類の断熱材であっても、メーカーや製品ごとの材料組成、気孔構造、成形・焼成などの製造方法によって、熱伝導率の性能値は変わります。

これらの製造技術やノウハウは各メーカー独自のものであり、カタログ値や使用条件を十分に比較検討したうえで材料を選定することが重要です。

なお、弊社宮原産業では多くの素材メーカーの断熱材を取り扱っています。各メーカーそれぞれの工夫やこだわりにも知見を持っており、製品の強度や耐久性、環境負荷(人体への影響の多寡)、価格面などを含めたうえで選定させていただきます。

さらに、使用用途からおすすめの断熱材を選定することも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

熱伝導率は「材料組成」や「製造方法」によっても変わる

工業用断熱材の熱伝導率を正しく評価するためには、単に数値だけを見るのではなく、「どのような材料組成で、どの製造方法によって作られているか」まで確認することが重要です。

また、断熱材は加工方法や使用形態によっても、実際の断熱性能に影響を受けることがあります。

一般的に、材料そのものの熱伝導率や物性値については、断熱材メーカーが試験データをもとに提示します。しかし、実際の設備や装置に組み込まれた際の断熱性能は断熱材単体だけではなく、設備機器の構造・用途・運転条件・温度分布・運転サイクルなど、複数の要因が複雑に関係して決まります。

そのため、弊社宮原産業では弊社が取り扱う断熱材および弊社の加工範囲において、仕様通りの材料選定・加工が行われているかを適切な方法で確認しています。

具体的には、以下のような方法で品質や性能の妥当性を確認しています。

  • 断熱材メーカーが提示する物性データや各種試験結果に基づく確認
  • 伝熱計算とシミュレーション
  • 弊社工程に組み立てが含まれる場合、昇温試験などの実測試験

なお、最終的な断熱性能の評価については、設備全体の設計条件を踏まえたうえで判断されるものと考えています。

だからこそ宮原産業では、お客様の目的とする断熱性能を実現するために、断熱材として適切に機能する状態で提供することを最も重要な役割と位置づけています。

工業用断熱材選びのポイントは?

工業用断熱材選びのポイントは?

工業用断熱材の選定は、使用環境や設備のリソース、コストなどを複合的に判断し、トータルバランスに優れた選択をする必要があります。

ここでは、最適な断熱材を選ぶために押さえておくべき4つの主要なポイントを解説します。

【工業用断熱材選びのポイント】

  1. 温度条件
  2. 物理的なリソース
  3. 価格
  4. その他(水分の有無、被加熱物の化学特性など)

選ぶポイント1:温度条件

断熱材選定の出発点は、正確な温度条件の把握です。ここでは「内側(炉内)」と「外側(鉄皮など)」の2つの視点が必要になります。

まず、炉内の温度に対しては、断熱材の耐熱温度を確認します。ここで重要なのは、カタログ上の「最高使用温度(短時間のみ使用可能)」に加えて、連続して稼働させても問題ない「常用使用温度(連続使用温度)」も基準として、余裕を持ったグレードを選ぶことです。

また、外壁温度を何度に抑える必要があるのかも設計の要です。

作業員の火傷防止や工場内の室温上昇を防ぐといった安全・作業環境面の観点に加え、放熱を抑えることで炉内に保持される熱量が増え、燃料効率の向上やエネルギー消費の削減といった省エネ効果も期待できます。

なお、一般的に断熱材は温度上昇に伴って熱伝導率が増加(悪化)するため、高温域になるほど輻射の影響を考慮した設計が必要です。

選ぶポイント2:物理的なリソース

次に、設備側の物理的な制約、特に「断熱層として確保できる厚み」を確認します。

「厚ければ厚いほど断熱効果が高い」と考えがちですが、実は一定以上の厚みを確保しても断熱性能は比例せず、ある程度で頭打ちになります。無駄に厚みを増やすことは、設備の大型化やコスト増に繋がるため、「必要最小限の厚み」を設計することが重要です。

一方で省スペース化が求められる場合やどうしても厚みが確保できない場合には、薄くても断熱性能が極めて高いマイクロポーラス断熱材などを選定し、物理的なリソース不足を素材の性能でカバーする工夫が求められます。

選ぶポイント3:価格

工業用断熱材は、素材の種類や性能によって価格が大きく異なります。

例えば、高性能断熱材と呼ばれるマイクロポーラス断熱材や真空断熱材は断熱性能は特に高いですが、価格面は比較的高価な部類に含まれます。一方で、セラミックファイバーなどは、高温域(1,200℃〜1,500℃程度)において性能・価格・取り回しのバランスが良く、コストを抑えやすい素材と言えます。

ただ、コスト減のために価格を重視しすぎてしてしまうと、炉の運転に影響を及ぼす場合もあります。

炉の運転に伴って高温環境にさらされる断熱材や耐火材は、使用を重ねることで徐々に消耗し、使用条件によっては破損してしまうことも。

そのため、必要に応じて断熱材や耐火材を入れ替えるメンテナンスが行われますが、メンテナンスの実施タイミングはさまざまです。あらかじめ定期的に計画されている場合もあれば、消耗や損傷の進行状況に応じて不定期に実施される場合もあります。

いずれにしても、炉の一時停止は生産性やコスト面で大きな損失に繋がるため、こうしたメンテナンス頻度や交換サイクルも含めて、断熱材の選定は総合的に判断することが重要です。

選ぶポイント4:その他(水分の有無、被加熱物の化学特性など)

温度や厚み以外にも、使用環境特有の条件を見落としてはいけません。

特に注意すべきは「水分」です。

水は断熱材と比較して熱伝導率が高いため、水分を含んでいるだけで熱伝導率に悪影響を及ぼします。特にマイクロポーラス断熱材は水と反応して構造自体が劣化し、恒久的に性能が落ちるため、水気がある環境では撥水処理などの対策が必須です。

また、被加熱物の化学特性にも注意が必要です。初回加熱時に、断熱材に含まれる有機バインダー(結合剤)が燃えて煙が出る場合があるため、嫌煙される環境では事前の焼成処理(空焼き)が必要になります。

最適な素材と組み合わせを検討することが大切

ここまで挙げた通り、工業用断熱材選びは「熱伝導率」というひとつの指標だけで完結するものではありません。

熱伝導率に加え、使用温度域に対する耐熱性、機械的強度や密度、加工性、吸水率、さらには耐久性といった複数の要素を総合的に評価する必要があります。

実際の現場では、ひとつの素材で全ての要求性能を満たす場面は少なく、炉の内側(高温部)には耐熱性や耐久性に優れた素材を、外側には比較的コストが低く保温性の高い素材を配置するなど、用途に応じた断熱材の組み合わせによって全体の性能バランスを最適化しています。

そのため、素材単体の性能評価にとどまらず、施工方法や異素材との組み合わせまで含めた提案が可能な会社に相談することが、失敗しない断熱設計への近道だと言えるでしょう。

工業用断熱材の製造と加工を手掛ける宮原産業

工業用断熱材の製造と加工を手掛ける宮原産業
展示会に参加した際のブース写真

私たち宮原産業は、工業用断熱材の製造・加工から電気炉の設計・製造まで、一貫して対応できる生産体制を整えております。

豊富な選定と提案の実績で、設備や機器の省エネを推進。特定メーカー品に限定せず、多様な素材から選定できるため、性能とコストのバランスを考えた柔軟なご提案が可能です。

さらに、試作や1点もの、小ロット製作にもスピーディーに対応できる機動力も強みです。「まずは試してみたい」「特殊仕様に応えてほしい」といったご要望にも柔軟にお応えいたします。

工業用断熱材や電気炉に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

貴社の生産効率・省エネ化に最適なソリューションをご提供いたします。