アラミド繊維とケブラーの違いとは?主要な高耐熱素材の選び方も解説

アラミド繊維とケブラーは、いずれも高強度・高耐熱性を備えた高機能素材として、産業・工業用途を中心に幅広く活用されています。

しかし、両者の違いが曖昧なまま選定されていることも少なくありません。期待する性能を最大限に引き出すためには、それぞれの特性や適用範囲を正しく理解しておく必要があります。

そこで本記事では、アラミド繊維とケブラーの関係性を整理したうえで、特性・用途の違いを実務視点でわかりやすく解説します。

さらに、ノーメックスやベクトランなど、アラミド繊維と比較されることの多い高耐熱素材の種類や特徴についてもご紹介します。

高機能素材・高耐熱素材の導入や見直しを検討されている方は、ぜひ参考としてお役立てください。

アラミド繊維とケブラーの違い

結論から言うと、アラミド繊維は素材の「総称」であり、ケブラー®(Kevlar®)はアラミド繊維の「一種」です。

つまり、両者は全く別の素材ではなく、「アラミド繊維」という大きなカテゴリの中に「ケブラー」というひとつの製品が含まれているという関係です。

【結論】ケブラーはアラミド繊維の一種

アラミド繊維とは、芳香族ポリアミド系樹脂からなる合成繊維の一種であり、高強度・耐熱性に優れた高機能繊維、いわゆる「スーパー繊維」の総称です。用途や求められる性能に応じて、パラ系やメタ系など複数の種類に分類されます。

そのなかでもケブラーは、アメリカの化学メーカー「デュポン」が開発したパラ系アラミド繊維の代表的な素材であり、同社の登録商標です。特に高い引張強度と耐衝撃性を持つのが特徴で、保護具や設備資材など用途は多岐にわたります。

したがって、アラミド繊維とケブラーの違いは、「総称」と「個別の繊維名」という素材の分類にあります。

なお、アラミド繊維にはケブラーの他にも、ノーメックス®やトワロン®などのさまざまな高機能素材が存在します。

アラミド繊維とケブラーの具体的な違い

アラミド繊維とケブラーの違いについて、さらに詳しく整理しましたので、あわせてご覧ください。

比較内容アラミド繊維ケブラー®
分類芳香族ポリアミド系合成繊維の一種パラ系アラミド繊維の一種
開発元特定企業に限定されない(デュポン、帝人、東レ、クレハ、コロンなど複数企業が製造)アメリカのデュポン社のみ
範囲メタ系、パラ系の全てを含むパラ系アラミド繊維の一部
主な特性・メタ系:耐熱性・難燃性に優れる
・パラ系:高強度・高弾性率に優れる
高い引張強度・耐衝撃性に優れる
主な用途・メタ系:防護服(消防服など)、断熱材、電気絶縁材など
・パラ系:補強材、ロープ、複合材料など
防護具(防弾・防刃)、タイヤコード、ロープ、複合材料など、高強度・高信頼性が求められる用途

アラミド繊維とケブラーの基本情報

アラミド繊維とケブラーの基本情報

アラミド繊維とケブラーの違いについて、さらに理解を深めるために、ここからはそれぞれの基本的な知識をご紹介します。

アラミド繊維の基礎知識

アラミド繊維とは、芳香族ポリアミド(アラミド)からなる高機能繊維の総称です。

ポリアミドの一種である点ではナイロンと同じ仲間ですが、分子構造の違いにより、強度や耐熱性などの性能が飛躍的に高いことが特徴です。そのため、「スーパー繊維」の代表格とされ、金属代替素材として宇宙航空、自動車、土木・建築など幅広い分野で活用されています。

アラミド繊維には「パラ系アラミド」と「メタ系アラミド」の2種類がある

一般的にアラミド繊維は、「パラ系アラミド繊維」と「メタ系アラミド繊維」の2種類に分類されます。

アラミドの分子構造は、炭素原子が六角形に結合した剛直なベンゼン環を基本骨格としています。このベンゼン環に対してアミド結合がどの位置・角度で結合するかによって、「パラ系」と「メタ系」に分類され、その構造差が特性の違いを生み出します。

パラ系アラミドは直線的な分子構造を持つため、分子同士が強固に配列しやすく、高い引張強度や弾性率を発揮します。この特性から、補強材やロープ、防護用途など、機械的強度が求められる分野で多く採用されています。

一方、メタ系アラミドは屈曲した分子構造を持ち、熱的に安定しやすい特性があります。そのため、優れた耐熱性や難燃性を活かし、防護服や断熱材、電気絶縁材料など、高温環境下での使用に適しています。

なお、パラ系アラミドも高温環境下で使用されていますが、炎や高温の熱波に直接さらされる消防服やアークフラッシュ防護作業服といった用途では、難燃性や熱安定性により優れるメタ系アラミドを採用するのが一般的です。

「高強度」をメインに置いたうえで耐熱性も確保したい(=パラ系アラミド)か、「難燃性と熱安定性」をメインに置いたうえで強度も確保したい(=メタ系アラミド)かによって、パラ系・メタ系の選定が異なる点には注意しましょう。

ケブラー®の基礎知識

ケブラーとは、デュポン社が開発したパラ系アラミド繊維の代表的な素材のことです。1970年代から産業用途で利用されており、豊富な導入実績に裏付けられた高い信頼性を持つ「スーパー繊維」です。

分子構造としては、硬いベンゼン環が一直線に連なり、分子同士が強固な力で結合しているため、引張方向に対して高い抵抗性を示します。この構造により、極めて高い引張強度・耐衝撃性・耐切創性を発揮することが最も大きな特徴です。

また、ケブラーは融点を持たず、約427〜482℃で熱分解が始まります。そのため、高温環境でも安定して高い強度を維持できることに加えて、分解時には溶融せず炭化するため、摩擦特性や形状安定性が求められる用途にも適しています。

さらに、熱による収縮率が極めて低いことから、高温環境下でも寸法安定性を維持できることもメリットのひとつです。

こうした優れた機械的特性と軽量性を兼ね備えていることから、ケブラーは強度と軽量性の両立が求められる用途に適しています。

具体的には、保護手袋や防護エプロンなどの保護具をはじめ、タイヤコード、ロープ、各種複合材料の補強材などに幅広く採用されています。特に、高い耐衝撃性や信頼性が求められる分野においては、今後もさらに活躍の場が広がっていくでしょう。

その他の高耐熱素材(高機能素材)

その他の高耐熱素材(高機能素材)

ケブラーをはじめとするアラミド繊維は、高温環境下での使用に適した高耐熱素材として広く活用されています。しかし、高耐熱用途に対応する素材はこれらに限らず、用途や要求性能に応じてさまざまな選択肢が存在します。

弊社・宮原産業では、高温環境での使用を想定した耐熱保護製品を長年製作してきた実績から、実際の使用現場で需要の高い高耐熱素材を幅広く取り扱っています。

現在、弊社で主に採用している代表的な素材は以下の通りです。

無機繊維・ガラス
・シリカ
・セラミックス
・生体溶解性繊維
有機繊維・メタ系アラミド繊維:ノーメックス®、コーネックス®
・パラ系アラミド繊維:ケブラー®
・PBO(ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール)繊維:ザイロン®
・ポリアリレート繊維:ベクトラン®
・その他の繊維製品:パイク(耐炎繊維とアラミド繊維の混紡)

ここからは、これらのなかでも特に代表的な高耐熱素材である「ノーメックス®」「ベクトラン®」「ガラスクロス」の3種類について、それぞれのメリットや用途を詳しく解説します。

  • 【現場で特に需要の高い高耐熱素材】
    • 1. ノーメックス®
    • 2. ベクトラン®
    • 3. ガラスクロス

代表的な高耐熱素材1:ノーメックス®

ノーメックス®(Nomex®)とは、デュポン社が開発したメタ系アラミド繊維の一種です。

ケブラーがパラ系アラミドの代表格であるのに対し、ノーメックスはメタ系アラミドの代表格として位置づけられており、アラミド繊維を代表する素材のひとつとして広く知られています。

ノーメックスは、アラミド繊維の中でも特に耐熱性や難燃性に優れており、高温環境や火炎リスクのある現場で広く採用されています。自己消火性を持ち、火源が取り除かれると燃焼が継続しにくい他、溶融滴下を起こしにくいため、着用者への二次被害リスクを低減できることも大きなメリットです。

また、熱間強度性(高温環境下における強度維持性能)に優れており、特に連続して約250℃以下の熱にさらされる環境において安定した性能を発揮します。

このような特性から、ノーメックスは消防服や高温炉周辺で作業する作業員の保護服などの防護用途をはじめ、耐熱カーテン、電気絶縁材料、フィルター用途など、熱的安定性と安全性が求められる分野で幅広く活用されています。

なお、競合品としては、帝人の「コーネックス®」が挙げられます。衣料用途における発色性や軽量性、国内流通におけるメリットを重視する場合は、コーネックスも検討してみると良いでしょう。

代表的な高耐熱素材2:ベクトラン®

高耐熱素材の選定において、ベクトラン®(Vectran®)はアラミド繊維と並んで名前が挙がることの多い素材のひとつです。

ベクトランは液晶ポリマー(ポリアリレート)繊維から作られるスーパー繊維で、クラレが1990年に世界で初めて商用化しました。アラミド繊維と比較すると歴史は浅いながらも、優れた機械的特性に加え、耐熱性や難燃性も兼ね備えていることから、アラミド繊維では対応が難しい環境に採用されています。

というのも、ベクトランは吸湿による性能変化が極めて小さいことに加え、耐薬品性や耐摩耗性にも非常に優れているからです。

一般的にアラミド繊維は湿度や摩耗の影響を受けやすいという難点がありますが、ベクトランは吸水率がほぼ0%で、水中や高湿度環境においても安定した性能を維持します。また、繊維同士の摩擦や屈曲疲労にも強く、長期使用における耐久性に優れている点も大きな特徴です。

こうした特性から、ベクトランは水産分野から宇宙分野に至るまで幅広い領域で活用されています。摩耗の激しい紐・ロープ・膜材や安全保護具をはじめ、酸・アルカリ環境下で使用される産業用途に広く採用されており、省資源・環境保護に役立つ素材としても注目されています。

代表的な高耐熱素材3:ガラスクロス

ガラスクロスとは、ガラス繊維(グラスファイバー)を織物状に加工した無機繊維素材であり、高い耐熱性と優れた寸法安定性を兼ね備えた代表的な高耐熱素材です。一般的に「ガラスクロス」と呼ばれるものの多くは、電気絶縁性と耐熱性に優れた「Eガラス」を指し、産業・工業分野で広く採用されています。

アラミド繊維などの有機繊維との最も大きな違いは、不燃性を備えている点にあります。

有機繊維は高温環境下において有機成分が分解されるため、ガスの発生や強度低下を招く場合があり、条件によっては発火リスクも考慮する必要があります。

それに対して、石英砂などの鉱物を主原料とするガラスクロスは有機成分を含まないため、長期間高温にさらされてもガスが発生しづらく、比較的安定した強度と形状を維持できることが特徴です。このような特性は、安全性の確保や品質の安定化にも寄与します。

そのため、ガラスクロスは長期間にわたり高温環境にさらされる用途に適しており、耐熱カーテンや断熱シート、電気絶縁材料など、遮熱・断熱用途を中心に幅広く活用されています。

宮原産業においても、工業炉や高温設備向けの耐熱カーテンや耐熱パッキンなどの製作依頼が多く寄せられており、実際の現場においても需要の高い素材です。

高い耐熱性を求めるならシリカクロスもおすすめ

より高い耐熱性を求める場合は、遮熱・断熱用途に適している「シリカクロス」も検討すると良いでしょう。溶接火花などを受けても溶融しにくい特性があるため、ガラスクロスよりも防護性能に優れた素材と言えます。

ただし、350℃程度の断熱・遮熱用途であれば、機械的強度やコスト面に優れるガラスクロスがおすすめです。使用温度や必要な耐久性、コスト条件などを踏まえたうえで、用途に応じて適切に使い分けることが重要です。

宮原産業なら最適な素材の選定から製作まで、一貫した対応が可能です

宮原産業では、高温環境で使用される耐熱保護製品を中心に、素材選定から製作まで一貫した対応を行っています。

さまざまな耐熱素材・高機能素材を取り扱っているため、お客様の使用環境や用途、求められる性能に応じて最適な素材を選定可能です。これまでの豊富な製作実績をもとに、実用性と安全性を考慮したご提案を行います。

具体的には、耐熱エプロンや手袋、腕カバー、前掛け、背面保護カバーといった作業者向けの保護具をはじめ、作業場の遮熱対策として用いられる耐熱カーテンなど、多様な製品の製作実績があります。

こうした対応が可能なのは、社内に縫製設備および耐熱糸などの各種副資材を取り揃えているためです。オーダーメイドでの製作にも対応しており、1点からの製作が可能で、現場ごとの仕様や細かなご要望にも柔軟に対応できます。

「この環境にはどの耐熱素材が適しているのか」「使用している耐熱素材を変えたいがおすすめはあるか」といったご相談にも対応しておりますので、耐熱素材についてお困りの際はいつでもお問い合わせください。

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アラミド繊維(ケブラー)などの高耐熱素材の選び方

高耐熱素材を選定する流れとしては、まず想定される使用温度によって候補となる素材を大きく絞り込み、そのうえで求める性能要件に応じて最適な材料を選定していくことが基本となります。

ここでいう「求める性能要件」は、使用環境や用途によって異なりますが、代表的なものとしては以下が挙げられます。

  • 高耐熱素材に求める性能の例
    • ・難燃性
    • ・耐切創性
    • ・強度
    • ・熱間強度
    • ・耐薬品性
    • ・耐候性

これらの性能要件は単独で求められることもあれば、場合によっては複数を同時に満たすことが必要となるケースも少なくありません。そのため、単一の特性だけで判断するのではなく、温度域・接触する物質・機械的負荷などの使用環境に応じて、総合的に評価すると良いでしょう。

また、選定の際には、耐久性や安全性に加え、加工性やコスト、供給安定性といった観点も考慮する必要があります。これらを踏まえたうえで、用途に最適な高耐熱素材を選定することが、製品性能の最大化と長期的な安定運用につながります。

なお、宮原産業では、お客様の環境や用途・必要な性能などに応じた素材選定も可能です。

耐熱保護製品を長年製作してきた実績を活かし、性能要件に応じて柔軟にご提案いたしますので、検討段階でもどうぞお気軽にご相談ください。

工業用断熱材の製造と加工を手掛ける宮原産業

工業用断熱材の製造と加工を手掛ける宮原産業
展示会に参加した際のブース写真

私たち宮原産業は、工業用断熱材の製造・加工から電気炉の設計・製造まで、一貫して対応できる生産体制を整えております。

豊富な選定と提案の実績で、設備や機器の省エネを推進。特定メーカー品に限定せず、多様な素材から選定できるため、性能とコストのバランスを考えた柔軟なご提案が可能です。

さらに、試作や1点もの、小ロット製作にもスピーディーに対応できる機動力も強みです。「まずは試してみたい」「特殊仕様に応えてほしい」といったご要望にも柔軟にお応えいたします。

工業用断熱材や電気炉に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

貴社の生産効率・省エネ化に最適なソリューションをご提供いたします。

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