SOFC(固体酸化物形燃料電池)とは?SOFCと断熱材の関係も紹介

脱炭素社会の実現に向けて、発電効率の高い次世代エネルギー技術として研究・実用化が進んでいるのが「固体酸化物形燃料電池」、略して「SOFC」です。

高温で作動する燃料電池のSOFCは燃料多様性を持つことから、カーボンニュートラル社会の実現に欠かせない技術として、世界中で開発が行われています。

その一方で、「SOECとは何が違うのか」「どのようなメリット・デメリットがあるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事ではSOFCの基礎知識を押さえながら、SOECとの違いやメリット・デメリット、具体的な使用用途についてわかりやすく解説。さらに、断熱材の製造・加工を手がける宮原産業ならではの視点から、SOFCの高温環境を支える断熱材の役割や重要性についてもお伝えします。

SOFCの導入を検討している方や、SOFC・SOEC向けの断熱材をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。

SOFC(固体酸化物形燃料電池)とは何か

SOFC(固体酸化物形燃料電池)とは何か

現在のガスインフラを活用しながら、将来的には水素社会やカーボンニュートラル燃料にも対応できる技術として、大きな期待を集めているSOFC。ここではまず、SOFCの基本的な特徴や仕組みについて、わかりやすく解説します。

SOFC(固体酸化物形燃料電池)の特徴

固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)とは、固体酸化物を電解質として用いる高温作動型の燃料電池のことです。呼称の際は、英語の頭文字を取った「SOFC」と呼ばれることがほとんどです。

水素・都市ガス・一酸化炭素などを燃料とし、燃焼を伴わない電気化学反応によって直接電力を取り出す仕組みが特徴です。

SOFCは家庭用から産業用まで幅広い分野で利用されており、身近な例としては家庭用燃料電池「エネファーム」が挙げられます。特に電力使用量の多い家庭向けのシステムとして、SOFC方式が採用されています。

SOFCの特筆すべき特徴は、約700~1,000℃という高温環境で動作する点にあります。

この高温作動により反応性が高まり、白金などの高価な貴金属触媒を必要とせず、発電効率の向上や排熱の有効活用が可能です。そのため、給湯や空調と組み合わせたコジェネレーション用途に適しており、次世代の分散型電源としても注目されています。

近年では、動作温度を約520℃程度まで低下させる技術開発も進められており、高出力化や適用範囲の拡大が期待されています。

さらに、燃料柔軟性に優れている点もSOFCの特徴のひとつ。一般的な燃料電池(PEFCなど)が高純度の水素を必要とするのに対し、SOFCは都市ガスやメタンなどの炭化水素系燃料を直接利用できます。そのため、既存のガスインフラを活用しやすく、水素を製造する改質工程を簡略化できるという利点もあります。

SOFC(固体酸化物形燃料電池)の仕組み

SOFCは主に、燃料極(アノード)・空気極(カソード)・電解質の3つの主要部材で構成されています。電解質には酸化ジルコニウムなどの固体酸化物(セラミックス)が用いられ、高温環境下で酸素イオン(O²⁻)のみを選択的に伝導する役割を担います。

SOFCによる発電は、「酸素のイオン化→電解質内での酸素イオン移動→燃料との電気化学反応」という流れで行われます。詳しくは以下の図解をご覧ください。

SOFC(固体酸化物形燃料電池)の仕組み

まず、空気極側では空気中の酸素が電子を受け取り、酸素イオンに変化します。

生成された酸素イオンは、電解質内部を通って燃料極側へと移動します。このとき、電解質は電子を通さず、酸素イオンのみを通すため、電子は外部回路を通って移動することになります。

燃料極に到達した酸素イオンは、水素や一酸化炭素などの燃料と反応し、水や二酸化炭素を生成すると同時に電子を放出します。この電子が外部回路を通って空気極へ戻ることで電流が生じ、発電が行われます。

このような電気化学反応によって発電するため、SOFCは発電効率が50%を超える高効率なシステムとなっています。さらに、高温で発生する排熱を給湯や空調に再利用することで、システム全体としてのエネルギー利用効率を大幅に高めることが可能です。

SOEC(固体酸化物形電解セル)との違い

SOFCと混同されやすい技術として、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)が挙げられます。

両者は名称が似ているだけではなく、セル構造や使用される材料、作動温度帯も共通点が多いため、同じ技術の延長として捉えられることがあります。しかし、その役割やエネルギーの使い方は全く異なる技術です。

SOFC(固体酸化物形燃料電池)は、水素や天然ガスなどの燃料を用いて電気と熱を生み出す「発電装置」です。一方、SOECは外部から電気を供給し、水や二酸化炭素を電気分解することで、水素や合成燃料の原料を製造する「電解装置」にあたります。

もっと簡単に言い換えると、SOFCはエネルギーを「取り出す技術」であるのに対し、SOECはエネルギーを「蓄える・変換する技術」です。プロセスの目的が異なる点が、両者の最も大きな違いだと言えます。

近年では、発電と電解を切り替えて行える可逆型な運用、つまりrSOC(Reversible SOC:可逆的固体酸化物セル)の研究も進んでいます。

再生可能エネルギーによる余剰電力を水素として貯蔵し、必要に応じて再び発電に利用する技術として、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な要素として注目されています。

なお、弊社宮原産業では、SOFC・SOEC向けの高温用断熱材を提供しています。

SOFC・SOECはいずれも高温作動を前提とするため、装置の効率や安全性を確保するうえで断熱性能に対する要求が非常に高くなりがちです。宮原産業では高性能断熱材をはじめとした最適な材料選定と設計提案を行うことで、製品それぞれの厳しい要求性能を満たすサポートを行っています。

豊富な選定・導入実績があり、量産向けの断熱部材の提供はもちろん、研究開発用途では断熱材だけでなく電気炉のオーダーメイド製作まで、使用温度や構造、運転条件に応じた提案と製作が可能です。

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SOFCのメリットとデメリット

SOFCは高効率な発電が可能な一方で、高温作動ならではの課題も抱えています。ここでは、導入を検討するうえで押さえておきたいSOFCのメリットとデメリットを整理して解説します。

  • 【SOFCのメリット】
    • 1. 高い発電効率
    • 2. 設置場所を選ばない導入柔軟性の高さ
  • 【SOFCのデメリット】
    • 1. 長期稼働や運転サイクルに課題がある
    • 2. スケールメリットが少ない

SOFCのメリット1:高い発電効率

SOFCの最大のメリットは、非常に高い発電効率です。燃料を燃焼させることなく電気化学反応によって直接電力を取り出すため、熱機関に比べてエネルギーロスが少なくなります。

一般的にSOFCは単体でも50〜65%程度の発電効率が期待されており、化石燃料を用いる従来型発電方式と比較しても高効率な電源だと言えます。

さらに、約800℃程度の高温で発生する排熱を給湯や空調などに再利用するコージェネレーションシステムと組み合わせることで、総合エネルギー効率は80〜90%に達します。

このような高効率なエネルギー利用は、一次エネルギー消費量の削減に寄与するだけではなく、CO₂排出量の低減やエネルギーコストの抑制にも繋がります。

SOFCのメリット2:設置場所を選ばない導入柔軟性の高さ

大規模な発電所に限らず、家庭・工場・商業施設・業務用ビルなど、さまざまな場所に分散して設置できる点も、SOFCの大きなメリットです。

水素専用設備を必要とせず、都市ガスやメタンなど既存のガスインフラをそのまま活用できるため、新たな燃料供給網を整備せずに導入できることも多く、初期導入のハードルが比較的低くなっています。

火力発電や水力発電といった集中型発電は高い発電能力を持つ一方で、大規模な設備や立地条件が必要になるため、建設コストや運用コストが大きくなりがちです。これに対してSOFCは装置の小型化が可能で、設置スペースや規模を抑えられるため、需要地の近くに設置できるという優位性があります。

さらに、燃焼を伴わない発電方式であることから騒音や振動が少なく、排ガス中の窒素酸化物(NOx)などの有害物質も極めて少ない点が特徴です。そのため、都市部や建物内への設置にも適しており、周辺環境への影響を最小限に抑えた運用が可能です。

SOFCのデメリット1:長期稼働や運転サイクルに課題がある

高い発電効率や燃料柔軟性を持つSOFCですが、運用面ではいくつかの技術的課題も存在します。

SOFCは約700〜1,000℃の高温環境で長時間運転される特性を持つことから、セル本体や電極、インターコネクタなどの周辺部材に大きな熱負荷がかかります。その結果、材料の劣化や熱応力による損傷が生じやすく、長期稼働における耐久性の確保が喫緊の課題です。

また、高温まで昇温・降温する過程で材料が膨張・収縮を繰り返すため、短いスパンでの起動・停止運転には適していません。

頻繁にオン・オフを繰り返すと、発電効率の低下や部材寿命の短縮に繋がる可能性も。連続運転や定常運転を前提とした用途に適しているSOFCは、使用条件によっては運転サイクルの制約が導入時のハードルとなることも少なくありません。

SOFCのデメリット2:スケールメリットが少ない

SOFCは、発電規模を拡大しても発電効率が大きく向上しにくいという課題があります。セルを多数積層して出力を高めることは可能ですが、火力発電のように設備を大型化することで効率やコスト面で大きなスケールメリットを得ることはなかなか難しいのです。

これはSOFCが基本的にセル単位で発電を行う構造であり、大規模化しても熱効率や運転条件が劇的に改善するわけではないからです。そのため、超大規模な集中型発電設備としては、必ずしも最適な選択肢とは言えません。

なお、この特性はデメリットであると同時に、用途によってはメリットにもなります。SOFCは「大規模集中型発電」よりも「中小規模の分散型電源」として高い適性を持っており、需要地近接型の発電やコージェネレーション用途において強みを発揮します。

導入を検討する際には、発電規模の拡大による効率向上を重視するのか、それとも高効率な分散型電源としての活用を重視するのかを明確にしたうえで、SOFCが適した選択肢かどうかを慎重に判断することが大切です。

SOFCの主な用途

SOFCは高い発電効率と安定した出力特性を併せ持つことから、家庭用から産業用まで幅広い分野で導入が進んでいます。

特に需要地の近くで発電し、電力と排熱を同時に活用できる点が評価されており、分散型電源としてさまざまな用途で活用されています。現在の主な用途は以下の通りです。

分類設置場所目的
家庭用戸建住宅・マンション電気代削減、給湯、CO₂削減
業務用病院、ホテル、商業施設省エネ、停電時の電源確保
産業用工場、データセンター安定電源、排熱のプロセス利用
電力事業用大規模発電所発電効率の極大化、CO₂削減

上記のように、SOFCは用途ごとに異なる目的に柔軟に対応できる技術であり、家庭用の省エネ対策から、産業分野における安定電源の確保、排熱を活用したエネルギー効率向上まで、幅広いニーズに応えることが可能です。

今後は、SOFCとSOECを切り替えて利用できるrSOC(可逆型固体酸化物セル)の普及も期待されています。rSOCが手頃な価格で広く普及するようになれば、将来的な水素社会や脱炭素社会の実現がより現実味を増すでしょう。

なお、宮原産業では、SOFC・SOEC関連の研究開発を支える研究用小型炉の設計・製造から、量産段階における断熱部品の提供まで幅広く対応しています。

特に研究用炉については使用温度・炉サイズ・研究目的が案件ごとに異なるため、オーダーメイドでの設計・製作を基本とし、お客様の要望や実験条件に応じた最適な断熱構造をご提案しています。

これまでに培ってきた豊富な導入・開発実績に基づく技術力を活かし、1点ものの研究開発用途から実機・量産設備に至るまで、SOFC・SOECに関わる多様なニーズに柔軟に対応可能です。

SOFC・SOECと断熱材の関係

SOFC・SOECと断熱材の関係

SOFCやSOECの動作において、断熱材が重要な役割を果たしていることをご存知でしょうか。高温をいかに外部へ逃がさず、かつ安定して保持できるかは、SOFC・SOECの性能や耐久性に大きく影響します。

最後に、SOFC・SOECと断熱材の関係として、高温環境下で求められる断熱性能の考え方や、装置構造に応じた断熱材の形状・選定ポイントについて解説します。

SOFC・SOEC用断熱材は断熱性能の要求が高い

SOFC・SOECに用いられる断熱材は、一般的な工業炉よりも高い断熱性能が求められることがほとんどです。

工業炉は鉄鋼や非鉄金属、各種材料の加熱・熱処理を主目的として設計されており、設置環境も製造工場内が中心です。そのため、一定の断熱性能は必要とされるものの、周辺設備への熱影響を厳密に抑える必要性は比較的限定的だと言えます。

一方、SOFC・SOECは、発電(SOFC)や水素製造(SOEC)といったエネルギー変換を目的とする装置であり、高温での連続運転を前提としています。さらに、配管類や制御機器、電気・計測系など多くの精密部品が周辺に配置される点も特徴です。

そのため、発生する高温をいかに外部へ逃がさず、かつ周辺設備への熱影響を最小限に抑えるかが重要な設計課題となります。こうした背景から、SOFC・SOECでは従来の工業炉以上に、高度な断熱性能が求められるのです。

なお、これらの要求をどのように満たすかは、メーカーや設計方針によって異なります。例えば宮原産業では、1,000℃以上まで耐えられる高温用の断熱材に、高性能なマイクロポーラス断熱材を適切に組み合わせることで、限られたスペースの中でも高い断熱性と安全性を両立させています。

断熱材の形状はシート状や構造に合わせた加工品までさまざま

SOFC・SOEC装置に使用される断熱材は、用途や装置構造、設置条件に応じて、さまざまな形状が採用されます。

代表的なものとして挙げられるのが、施工性に優れたシート状の断熱材です。薄く柔軟な特性を活かし、限られたスペースでも効率的に断熱層を構築できるため、SOFC・SOECのようなコンパクトな装置に適しています。

一方ブロック状の断熱材は、大型炉などで広い面積の断熱層を形成する際に用いられることが多く、工業炉分野では一般的な形状です。断熱材を積み重ねることで、安定した断熱構造を構築しています。

さらに、セルスタック周辺や炉内部など、形状が複雑でスペースに制約のある部位では、装置構造に合わせて加工された成形断熱材が採用されることも少なくありません。これらの加工品は、断熱性能の確保に加えて、組立作業の効率化やメンテナンス性の向上にも寄与します。

SOFC・SOECの高性能化・長寿命化を実現するためには、単に高性能な断熱材を選定するだけではなく、使用温度や装置構造、運転条件を踏まえたうえで、最適な形状・構成に設計・加工することが重要です。

工業用断熱材の製造と加工を手掛ける宮原産業

工業用断熱材の製造と加工を手掛ける宮原産業
展示会に参加した際のブース写真

私たち宮原産業は、工業用断熱材の製造・加工から電気炉の設計・製造まで、一貫して対応できる生産体制を整えております。

豊富な選定と提案の実績で、設備や機器の省エネを推進。特定メーカー品に限定せず、多様な素材から選定できるため、性能とコストのバランスを考えた柔軟なご提案が可能です。

さらに、試作や1点もの、小ロット製作にもスピーディーに対応できる機動力も強みです。「まずは試してみたい」「特殊仕様に応えてほしい」といったご要望にも柔軟にお応えいたします。

工業用断熱材や電気炉に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

貴社の生産効率・省エネ化に最適なソリューションをご提供いたします。

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